2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
フォト

« SWAN MAGAZINE vol.24 | トップページ | 門下生、師にこんなところまで似る?(笑) »

2011年7月11日 (月)

7/10(日)『ベッジ・パードン』@世田谷パブリックシアター

いつだったか、まだ私が西日本に住んでいた頃、SISカンパニーから次の舞台のご案内が届いた。深津ちゃんと野村萬斎かぁ。しかも夏目漱石のロンドン留学時代の話かぁ。ちょっと興味あるなぁ。でも私の大嫌いな世田谷パブリックシアターか。しかも演出は三谷幸喜か。私は野田秀樹には受ける人だけど、三谷幸喜はどうなんだろう?微妙だ。第一、舞台見に行くなんて心境じゃないし、この先どうなるかわからないし。やっぱりやめておこうと取りやめた舞台『ベッジ・パードン』。それが何で急に行くことになったのかというと、もちろん最近ずっと語り続けていた通り、『先生と僕〜夏目漱石を囲む人々〜』の影響である。『先生と僕』を読んだことで急に始まった私の中の漱石モード。そこで関連本を色々読んでいるうちに、高浜虚子の『回想子規・漱石』という本の中に漱石が病床に臥している正岡子規のために書き送っていた『倫敦消息』の一部が抜粋されていて、そこに「ベッジ・パードン」というあだ名を付けた下宿先の下女についての記述が出て来たのである!なるほど『ベッジ・パードン』というタイトルはここから出てきたんだと判明し、急に舞台『ベッジ・パードン』が気になり始めた。そして更に後押ししたことはJR東日本で東日本パスという期間限定の有効期限1日でJR東日本管内の列車は新幹線も含め乗り放題のお得切符の存在だった。東京まで往復1万円は激安だ!しかし問題は舞台のチケットを確保することだった。何しろ人気の三谷作品なので、前売り完売状態、当日席はあるはあるけど、前日にかけTELをして、整理券番号をgetし、その番号順に販売するとのことで、下手すりゃ立見と相成る。休憩入れて3時間の舞台で立見はつらい。何とか東日本パスが使える期間のチケットが手に入らないかしらと思っていたら、見に行けという神様の思し召しにより、奇跡的に今日(もう昨日か?)のチケットが手に入ったのである!\(≧▽≦)/

という訳で、7/10に東京に出掛けて来たのでした。2月のNODA・MAP『南へ』以来の東京なので、実に5ヶ月ぶりである。観劇自体も5ヶ月ぶり。そして今度こそこれが今年最後の観劇となるはず。

行きの新幹線はもちろんはやての指定席を取り(指定は2回までOK)、何があるかわからないから、少し早目に東京に着くような時間にした。時間に余裕があればSWAN MAGAZINE vol.24を探しに本屋に行こうと思っていた。ところが、新幹線が発車してから間もなく新幹線が止まって、電気が消えてしまった!何?と思っていたら、地震のため、電気の送電が停止し、停車したとのアナウンスが入った。地震で新幹線が止まるなんて、余程大きな地震に違いない。もしかして、開演に間に合わない?と血の気が引いた。とりあえず家に電話して、状況を確認しようと思ったら、電話がなかなかつながらない。これはヤバイかもと思っていたら、ようやく通じて、さほど大きな地震ではなかったことを確認し、ホッとした。新幹線は約20分遅れで、再出発して、無事東京に辿り着いた。早目の新幹線にしておいて、本当によかった。あと1本遅かったら開演に間に合わなかったかもしれない。というのも世田谷パブリックシアターは何と定刻開演だったのである!歌舞伎座、宝塚以外では珍しいことである。更に開演前のアナウンスで、上演中強い揺れを感じたら、慌てずに係員の指示に従ってくれと言われた。そういえば山手線に乗って渋谷に向かっている途中、東海道新幹線も地震のため遅延が出ていると電光掲示板に書いてあって、何?関東付近でも地震あったの?と思ったので、休憩時にまた家に電話をして確認したが、朝の地震以外知らないという。じゃあ大丈夫だなと思って、安心して観劇をした。(帰れなくなるのが困るから。)ちなみに劇場内は臨時席やら立見やらたくさん出て、大盛況状態だった。

随分前置きが長くなったが、いよいよ初三谷作品の観劇スタート!

幕は多分漱石がロンドン留学していた当時のロンドンの地図と思われるものだった。地図の左下の方に赤い点灯があったので、そこら辺に住んでいたという合図だったのか?その幕が開くと漱石の3度目の下宿先であるブレット家の外観が出てきて、屋根裏の窓から深津ちゃん演じるアニーこと「ベッジ・パードン」がカーテンを開け、外壁がせり上がって、漱石の部屋、下手側には階段が見え、全てこの中で話が進んでいく。舞台美術のセンスは悪くない。逆に実際の漱石はこんなに広い立派な部屋には住んでいなかったのではと思ったほど(笑)。

このお芝居での金之助(漱石)は英語を話すのが(聞き取りも?)苦手という設定である。まあ私も今回こんなに漱石モードにならなければ、へぇ~とそのまま受け入れてしまっていたことだろう。ところが実際の金之助はクイーンズイングリッシュを話す人との会話及び聞き取りには問題がなく、単に訛りのひどいコックニーにだけ悩まされていたのである。この劇場内にその事実を知っていた人が一体どれだけいたのやら。漱石って英語話せない人だったんだ~って誤解したまま帰った人多いだろうなあと思った。(何しろ漱石が学生だった時代、教科書が全て洋書だったので、どんな科目でも英語で授業という恐ろしい時代だったのだそうだ。漱石の英語はかなり高度なもので、漱石のわからないを我々のわからないと同レベルで考えてはいけないのである。いかに漱石の英語が優れていたかということについては新潮選書『英語教師 夏目漱石』という本を読んでみるとわかる。)まあ話をわかりやすくするための設定だとは思ったが、現代のように英語話せなくても教員免許取れますというようなレベルでは決してないので、同じ下宿人の惣太郎に「日本で何してたの?」という質問に「英語教師」と答える場面があるのだが、私は笑えなかった。しかも教師という仕事は今よりも人材が少ない。しかも金之助が勤めていたのは熊本の第五高等学校である。昔は高校自体数が少ない。それをいってもノーリアクションな惣太郎の方が微妙って感じがした。(当時高校の教授といったらエリートだったと思うのだが。)

惣太郎は流暢な英語を話すという設定である。でも教養のないブレット家の人々と流暢に話せるというのは逆に正統派クイーンズ・イングリッシュではないのではないかとちょっと思えた。ただ彼が世慣れしていることは服装でわかった。紳士の服装はフロックコートにシルクハット、そしてステッキである。(ベストの趣味はかなり悪い気がしたが。)一方の金之助は普通の背広姿。もちろんロンドンでなけなしのお金でフロックコートを誂えているので(社交上必要だから)、このお芝居には出てこなかったけれども、実際にはかなり服装にはこだわっている。このお芝居の中でずっと背広のままだったのはイケてない金之助を表現していたのかなと思った。社交にはとにもかくにもお金がかかるので、漱石は犬猿していたのではあるが。

それとお芝居の中で金之助が部屋の中では靴を脱ぐように指示する。アニーは靴下が壊れていたので脱ぐのを躊躇するが、ブレット夫人の妹のケイトはあっさりと脱ぐ。ヴィクトリア朝はヴィクトリア女王の方針で、女性は他人様にくるぶしなどを見せるなどレディにあるまじき行為である。ここらへんからもブレット家の教養の無さが垣間見える。ちなみにケイト・スパローについては鏡子夫人にも繕い物をしてくれる親切な人と伝えており、一緒にピンポンを楽しんでいるところからしても、お芝居中のような奇天烈な人物ではなかったようだ。

1幕目はテンポよく進んでいく。屈託のないアニーは金之助の緊張感を溶かしていく。惣太郎は日本語になると生まれ故郷の秋田弁丸出しになる。金之助は江戸っ子だから、日本語にはある意味自信がある。だからさかんに日本語を話したがるし、実際交際は肩の凝らない日本人が多かったようである。惣太郎は日本語では馬鹿にされるけど、英語なら馬鹿にされないというコンプレックスを持っている。金之助はコックニーが理解出来ず、またロンドン生活に慣れずコンプレックスを抱えている。背が低いことやあばた顔のことやら(これらは劇中には出てこないが)人種差別のことやら挙げ出したらキリがないほど。クレイグ先生だって本当はスコットランド出身だし(劇中では判明しないが)、ブレット夫妻も意志の疎通が図れない人物達で何かと悩みを持っている。その中でアニーだけは下層階級にいてもいつも前向きに思ったことを行動しているように思えた。

2幕で惣太郎が金之助への嫉妬を爆発させる。自分は英語は流暢に話せるが、いかんせん金之助のようなユーモアセンスがないから会話がつながらないと嘆く。それには金之助も驚くのだが、実際の漱石は寄席が大好きだったので、ユーモアセンスは確かに持ち合わせていただろう。但しこのお芝居で言及されていたユーモアとはちょっと違うと思うが。だから、この場面は結構こじつけっぽく感じた。

またブレット氏失踪の際に「言葉に表さないと伝わらないことがある」ということを強調していたが、そうとも言い切れないと思った。まさにアニーが金之助に実は日本に妻子がいることを知った時、金之助の前から身を引くことで自分の思いを表している。言葉が全てではない。相手に対する思いこそが言葉に勝るって気もして、全面的に肯定はできないと思った。お互いの置かれた境遇を理解した上での言葉なら意味があると思う。気持ちのこもらない言葉は例え言ったとしても真意は伝わらないと思う。気持ちが伝わらないからこそ、惣太郎は流暢に英語が話せてもコミュニケーションがうまくとれないということではないのだろうか?「言葉に表さないと伝わらないことがある」ではなく、「その気持ちを言葉に表さないと伝わらないことがある」といったほうが正しいような気がした。

それと犬のジョンと金之助の会話で唐突に小説家になれという話が出て来る。あれはかなり無茶だと思った。あれを言わせるのなら、金之助についてもっとお芝居の中で観察力に優れたところを強調する必要があると思うが、そういう場面はあんまりないので、あまりにもこじつけくさく、わざとらしい。

またアニーとの別れもあんなんじゃなくて、漱石が実際書き残していたことを使ったほうがよかったのではないかと思った。つまり、ブレット家の人々と下宿を移動することになった最後の晩、漱石とペン嬢(アニー)が二人っきり残されるのだが、漱石はベッジも新しい下宿に来ると思っていたのに来なかったので、解雇されたことに驚く。アニーはその時点で自分が解雇されることを知っていたはずだ。だからここを使って二人の別れの場面を作ったらよかったのにと思った。そして漱石は今までの西洋の人真似ではなく、自分自身の考えを基軸に物を考えていく人物になり、猛勉強して、神経衰弱になり、帰朝することになり、日本で『猫』を書く時ベッジを思い出すなんていう方がアニーという人物が漱石に与えた影響を伝えることができたのではないかと思った。実際の漱石は女性には潔癖っぽかったようなので、ちょっとこのお芝居は甘甘なラブストーリーが過ぎたような気がする。

劇中、金之助がアニーに日本の童歌を教えるという場面が出てきて、萬斎さんが「じいさん、酒飲んで酔っ払って死んじゃった」って歌を歌うのだが、劇場内に響き渡るように朗々と歌っていて、おさすがと思った(笑)。浦井くんの歌(?)の方が拍手喝采を浴びていたが、私は萬斎さんの歌の方が素晴らしいと思った。萬斎さんの金之助はよかったと思う。深津ちゃんはもうとにかくかわいくて、素晴らしかった。浅野さんの11変化はすごかった。同時に劇中金之助が「イギリス人はみんな同じに見える」というリアリティにつなげる演出でもあったんだろうなとも思った。浦井くん、かつらのせいもあって顔がよく見えなかったんだけど、太った?って思った。そして、浦井くんの役はなくてもいい役だったかもと思えた。あんまり重要じゃないし。2幕無意味に長いし。

それとクリスマスイヴにプレゼント交換はおかしいでしょうって思った。プレゼントを開けるのは25日のクリスマスディナー時が一般的なのではって思った。なんか日本の今の習慣とごちゃまぜな感じ?

ちなみに漱石はお猪口一杯で酔えちゃう程の下戸だったそうので、1幕始めの方の二日酔いする程飲むということはなかったのではないか。

という訳で役者さんたちの奮闘ぶりはよかったと思ったが、お芝居の話としては私にはちょっと微妙だったかな。三谷作品を見るのはこれが初めてなので、これが三谷流の笑いなら、やっぱり私にはあんまり受けないと思った。野田さんのようなツボにははまらなかった。ただ交通費が安かったことが大きいのか、落胆はなかった。まあまあだったってくらい?

やっぱり色々読んで知ってしまっていると粗探しっぽくなって、あんまりよくないかもとも思った(苦笑)。

カテコは1回で、すぐ終了アナウンス。ちょっとあんまりな感じがした。

そうそう、パンフレットは1000円だったのだが、全額東日本大震災の義援金にするとのこと。ありがたいことだと思った。でもパンフレットに漱石の英語力についての事実をもう少し詳しく載せてあげると観に行った人の誤解が少なくなるんじゃないかと思った。

以上『ベッジ・パードン』の所感でした。

« SWAN MAGAZINE vol.24 | トップページ | 門下生、師にこんなところまで似る?(笑) »

観劇・舞台関連」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« SWAN MAGAZINE vol.24 | トップページ | 門下生、師にこんなところまで似る?(笑) »

お気に入り

  • Twitter
    twitter仲間大募集中!携帯からでもつぶやけるからさあ~、アカウント作って!。ちなみにブログより小ネタをリアルタイムでつぶやいています。(最近あまりブログを更新していないので、Twitterの方がリアルタイム情報です)
  • 東様によるデュマ作品翻訳HP
    日本で未翻訳の『或医者の回想』の第一部にあたる『ジョゼフ・バルサモ』が掲載されています。現在は第三部にあたる『アンジュ・ピトゥ』を毎週土曜日に翻訳連載ブログにて連載中!毎週の楽しみです!!私内的師匠です(笑)!
  • NODAMAP
    賄いエッセイにはいつも笑わせてもらっています。
  • Ryuichi Sakamoto Playing The Piano 2013
    教授の活動が見れます。
  • はなのきろく
    RAMAママさんの新しいブログ RAMAママさん宅の素敵なお庭の花の数々
  • DouzoMesiagare!!
    2児の母RAMAママさんによるお弁当ブログ新装版
  • リラフリ
    東京でリラクゼーションを無料体験!
  • Happiest Magic
    ディズニー大好き一家のHPです。膨大な量のキャラクターサインが自慢です。
無料ブログはココログ