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2006年11月12日 (日)

「タンゴ・冬の終わりに」

今日観てきた舞台は蜷川さんの「タンゴ・冬の終わりに」です。

久々にお芝居らしいお芝居を観たって思えました!本当に久々にお金出して来たかいあったって思いましたよ(笑)。こういうお芝居観たかったのよって。私の中ではかなりヒットしました。文学でも映画でも狂気の世界に琴線が触れる私にとって今回のお芝居は私の琴線にふれるたくさんの要素をもっていました。なので、自分の中で色々な感情がこみ上げていて、うまく言葉にならないのですが、すごくじ~んときたんです。

まず最初に、この舞台、オープニングにものすごい大音響のパンクの歌と思われるものが流れます。よく聞いてみるとそれは戸川純さんの「蛹化の女」だったんですよ!!あの玉姫様のアルバムの一番最後に入っていた!!もうそれだけでこの舞台にひそむ狂気が知れますよね。ちなみに私、今でも「蛹化の女」はしっかり歌詞覚えていて、歌えますよ。今日も思わず舞台観ながら歌いそうになってしまったくらいに(笑)

そして幕が開いたら、目の前には映画館の観客として80名もの大群衆がいました。80名もの人が舞台に上がっているのはかなりの迫力とインパクトです。みんな「蛹化の女」パンクバージョンにあわせるかのように激しく動いて、彼らの目の前に映し出されているであろう映像(思わず本当に我々の客席の後ろに映像が映っているんじゃないかと錯覚を起こして、つい後ろを振り返ってみてしまいました。当然何もありません。)に反応しています。そして歌が一転して、今度は「蛹化の女」オリジナルバージョン(パッヘルベルのカノン)に変わったときにこの映画館の大群衆の動きも前の激しい動きとは一変し、スローモーション化します。スローモーションの動きとともに観客が映画館から消えていく。そして映画館には誰もいなくなり、主人公の盛が一人残る。映画館の観客は過去の幻影であり、舞台は現実世界と引き戻される。

このお芝居ではパッヘルベルのカノンが随所に使われています。曲だけだったり、戸川純さんの「蛹化の女」だったり、そしてスターリン(懐かしすぎない?)の遠藤ミチロウさんが歌う「蛹化の女」だったり。

「蛹化の女」の歌詞に「それはあなたを思いすぎて変わり果てた私の姿」というくだりがあります。これがこのお芝居に出てくる主要人物4名に反映していると思いました。それぞれがそれぞれに対しての思いが強すぎて、それぞれの狂気を持っている。女だけじゃなく、男も。それゆえに戸川純さんだけでなく、遠藤ミチロウさんバージョンもあったんじゃないかって思えました。

盛のためにはなんだってできるというぎんは確かに狂気を帯びている。そんなぎんを怖いという水尾に狂気がないわけではない。手紙をもらい、夫に内緒で盛に会いに来た水尾を動かしたのもやっぱり狂気なのである。水尾を愛しているが、自分は愛されていないことを知っている連はその心の空虚を埋めるために過食になっていて、やっぱり狂気を帯びている。狂っているのは盛だけではない。みんなが変わり果てた姿をさらしているのである。

パッヘルベルのカノンもサティのジムノペディも美しい曲ですが、私はこの2曲には美しいだけでなく、なんとなくぼんやりとした不安とそこはかとない狂気を感じていました。だから聞いていて落ち着かないというかはかはかしてしまうんですよね。この曲がBGMに使われたいたこと自体、舞台全体に不安定な不気味な空間をかもし出していたように思えました。

「あわれ彼女は娼婦」を観たときにヤプーズの「サンプルA」という歌を思い出してしまったと書きましたが、「蛹化の女」を聞きながら私の頭をよぎった曲が実はもう1つありました。やっぱり戸川純さんがらみで、ゲルニカの改造のなんとかいうアルバムに入っていたA面2曲目の歌なんです。タイトル忘れたんですが、「カフェ・ド・サヰコ」とかいったような?歌詞はしっかり覚えているのですが、タイトルは忘れました。この歌にインスパイアされて、当時絵を描いたくらいに気に入っていたので。女がカフェで男との過去を振り返る内容なんですが、記憶の中の幻影を動きを止めた世界の中で見つめているというような感じの歌だったんです。狂気の世界で生きている盛を見つめるぎんにこの歌の女を感じたのでした。特に2幕の盛と水尾がタンゴを踊る場面で、ぎんと連が二人を脇で感情を無くしたような表情で眺めているのを見たときに思い出したんです。かつて愛し合った盛と水尾が踊るタンゴをそれぞれの配偶者がそれぞれの思いをもって見つめる。ここでのぎんと連はものすごく印象的でした。

ダンスシーンというのは生、死、エロス、狂気などの表現としてよく使われると思います。(ヴィスコンティ映画やベルトルッチ映画ではおなじみってところです。)このお芝居でもそれらを象徴していたように思います。最後に錯乱した盛がやっぱりタンゴを踊る。そしてそこに幻影の革命家たちも現れ、一緒にタンゴを踊り始める。水尾を殺された連が盛をナイフで刺し殺す。狂気が一層強まる。その強烈さの反動でなのか映画館の壁が崩れ、そこに桜の大木が姿を現し、桜の花びらが吹雪のように舞い、狂乱のタンゴを巻き込んでいく。桜の木の下には死体が埋められていると思わせるようになにやら桜にはある種霊力のようなものがあるように思います。花吹雪が盛の狂気の世界を浄化させたようにもみえました。

堤さん、淡々と演じているのですが、表情が怖いんです。やっぱりその表情には静かな狂気が宿っていると感じさせる演技でした。私が今回一番よかったと思ったのは秋山さん。もうぎんの切ない気持ちが伝わってきて、思わず泣けてしまったくらいです。最後一人去っていく姿もとても悲しく印象的でした。もうぎんにじーんときました。段田さんは笑いをとるシーンが多かったですけど、よくみると表情が怖いんです。そういうところに段田さんのうまさを感じました。

そして本当はこの舞台を観に来た目的でもあった常盤さんですが、残念ながら私がいつもテレビで感じていたようなものは得られませんでした。ひたむきな役に関しては右に出るものなしというくらいの女優さんなのに、そういうオーラが感じられなかったのが残念です。やっぱりこの人は映像向きの人なんでしょうと思いました。舞台って観客を惹きつけるオーラがないと印象薄いんですよね。

というわけであんまりまとまらないのですが、予想以上に心にしみた作品でした。観に行って本当によかった。たぶん私が今年観たお芝居の中で一番よかったと思います。

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